「かねもちくらぶ」の連中が、そんなふうに話していたのを耳にしたことがある。
しかし、いくらなんでも、そんなことはないだろうと思っていた。
なにより、あの老人の口ぶりからして、そんなはずはないのだ。
ところが……。
まさかと思いながら、ぼくは、もう一度その病院へ行ってみた。
そして受付で訊いてみた。すると、やはり、そんな話は聞いたことがないという返事だった。
では、あの老人は、なんのために、そんな嘘をついたのか? いったい、どういうつもりで……。
もちろん、これは、ただの偶然である可能性もある。老人がたまたま、その話を知っていただけかもしれない。あるいは、老人がうっかり口をすべらしてしまっただけとも考えられる。
ただ、ぼくには、どうも気になるのだ。
あの老人と会った翌日、ぼくは、またあの場所に行ってみた。
やはり、あの老人がいた。
今度は、かなり長い時間いたと思う。一時間以上もいたかもしれない。
老人は、いつものように釣り糸を垂れていた。
しかし、ぼくの姿を認めると、 〈おや〉 という顔をし、すぐに笑顔になった。
それから小声で、こう言ったのだ。
〈あんたさんか。こりゃあ、えらいもんを見たね〉
ぼくは黙って頭を下げた。
老人は、
〈いいんだよ。気にせんでくれ〉
と言った。
〈だれにも言わんよ。安心してくれ〉
ぼくはうなずき、そして訊いた。
〈昨日……〉
〈うん?〉
〈昨日、わたしの知り合いが入院している病院の前を通りかかったんです。そうしたら、ちょうど…
(続く)